2022 Favorites: Movies and TV Shows


2022年の映画のお気に入りをまとめた。2023年の間違いとかではありません。2022年の総括としておおかた作ってはあったのだけど、一回書き詰まってから放置したら2023年末になっちゃった。ので、2023年を総括する前にちゃんと書き残しておく。

今の気持ちで順番を変えたりしてはいるけど、2023年末に振り返ってもどれも好きな作品だな、と思うなど。結果としてあらためて振り返れたので良かった。

2022年中に観た過去作で好きだったのはマイク・ミルズ監督「人生はビギナーズ」、斎藤久志監督「草の響き」とHBO版のドラマ「ある結婚の風景」。

 

 

 

 

13. マイク・ミルズ「カモン カモン」

Mike Mills, 'C’mon C’mon'

子どもたちを「子ども」として見るのではなく、一人の人間として、そしてパートナーの一人として、対等に接すること。ここに並べるならアレックス・トンプソン監督「セイント・フランシス」と宇多田ヒカルの「BADモード」を。

 

 

 

12. ドミー・シー「私ときどきレッサーパンダ

Domee Shi, 'Turning Red'

若者が変化しながら成長していく物語にガールズフッドと推しの要素が入ったら、それはもう2022年のわたしが好きに決まってる作品。

 

 

 

11. ルッソ兄弟「グレイマン

Anthony Russo, Joe Russo, 'The Gray Man'

アクション映画については、わたしは語れることがあんまりない。主人公がめっちゃ強いスパイものがただただ好きということかな。あと、007で出番が一瞬で終わったアナ・デ・アルマスが活躍してて嬉しい。

 

 

 

10. トーマス・マッカーシー「スティルウォーター」

Tom McCarthy, 'Stillwater'

生きていくということは間違い続けていくことなんだなあ、と思った。これまでで一番いいマッド・デイモンでは?

 

 

9. 加藤拓也「わたし達はおとな」

Takuya KATO, 'Grown Ups'

うまくいかないふたりの気まずさや距離感がリアルで、観ているこちらの心をじりじり削ってくる。物語の登場人物そのものには共感できないかもしれないけれど、ああ言ったらこう言い返す、そんな会話のやり取りがあまりにも身に覚えがあって、苦しい。それでも観たくなってしまうのは、恋愛というものが「うまくいかなさ」の経験の積み上げでできていくと思うから、かもしれない。

 

 

 

8. イ・スンウォン「三姉妹」

이승원, '세자매'

いまだ根強い韓国の家父長制について。少しずつ変わって来てはいるのかもしれないが、この作品では過去の傷を癒せず今も苦しむ姉妹を描く。自分が本当は何に苦しんでいるのか、ということを見つけ、本当の敵と対峙する物語。

 

 

 

7. セリーヌ・シアマ「秘密の森の、その向こう」

Céline Sciamma, 'Prtite maman'

少女が自分と同じ歳のころの母親と出会う物語はもしかしたらタイムリープものとも言えるのかもしれないけど、手垢がつきまくったそのモチーフをこんな風に瑞々しく切実なドラマにできるのか、と驚いた。自分の知らなかった母の姿に出会い、その傷を癒していく。タイムリープ的な構成がむしろあたらしい形での女性同士の連帯を見せてくれた。

 

 

 

6. 石川慶「ある男」

Kei ISHIKAWA, 'A MAN'

2022年の冬が始まるころ、わたしは新しい仕事を探すために大量の求人票を眺めていた。自分にたったの1ミリでも起きうるかもしれない、数多の新たな可能性に思いを馳せていると、どこか他人の人生を見ているようで自分が誰なのかまでわからなくなってくる。他人の人生を生きることについての物語をそんな時期に観たのだった。

アイデンティティのあいまいさを描く物語に沿うように、主人公が誰なのかを明確にせず、どこに着陸するかわからない脚本に引き込まれた。

 

 

 

5. ジュリア・デュクルノー「TITANE チタン」

Julia Ducournau, 'Titane'

車への性的欲求と満たされない欲望の隙間を埋めるような破壊衝動、妊娠への恐怖と喜び、変わりゆく体と息子としての役割、妄想と現実のはざまにある愛情……。混ぜこぜでぐちゃぐちゃの物語の中で、世の中の枠では定義することのできないアイデンティティを描く。あまりにも力強いクィアの表現にブン殴られた気持ちになった。

 

 

 

4. 「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」

'이상한 변호사 우영우'

自閉症の主人公の物語である本作はどうしたって生きづらさを描くものになってしまうけれど、クジラのことを考えながら、お決まりの文句を口ずさみながら、困難を軽やかに飛び越えていくパク・ウンビンの姿にどんどん引き込まれてしまった。そして時にウ・ヨンウが見せる切実さは、もう少しだけでも世界が優しくなっていきますように、という願いが込められていた。「愛の不時着」みたいに全キャラクター好きになれるメイン俳優陣もみんな見事。

 

 

 

3. ペドロ・アルモドバル「パラレル・マザーズ

Pedro Almodóvar - 'Madres paralelas'

パートナーシップの新しいかたちというものにずっと興味があって、そういったテーマを扱う作品に惹かれ続けている。病院で取り違えられた子どもという、よくありそうなプロットから始まる本作は、パートナーシップのあり方という観点で自分の想像を超えたところへ着地していった。アルモドバルのモチーフである母としての物語から既存の形に囚われないパートナーシップ、家族の繋がり、スペイン内戦に関するサブプロットへと滑らかに繋ぎ、今も印象に残るあのラストシーンまで結ぶ手腕に圧倒されてしまった。

 

 

2. 三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」

Sho MIYAKE, 'SMALL, SLOW, BUT STEADY'

公開当初、素晴らしい作品であることは間違いなく感じていた一方で、人生の岐路で葛藤する人の物語というのが同時の自分に重ねる部分が多すぎてあまり冷静に観られなかった。2023年になり、あたらしい道が決まって落ち着いてからもう一度観てはじめて涙を流した。日常を切り取るだけで多くを語らなくても素晴らしい映画が作れる。そういうことをやってくれた三宅監督を信頼すると同時に、こんな作品が日本でももっと増えたらいいな、と思う。

 

 

 

1. コゴナダ, ジャスティン・チョン「Pachinko パチンコ」

Kogonada, Justin Chon, 'Pachinko' (Season 1)

移民の物語というものにどうしても惹かれてしまう自分がいる。これは東北の端から東京だったり大阪だったり、自分の生活の場所を生まれ育った場所から遠くに置いていることによるのかもしれない。もちろん言語の違いはないし(方言の違いはある意味大きなものではあるけども)、きつい差別を受けるわけでもないし、移民の人びとの生きづらさというのはこんな程度のものではないだろう。でも、生まれ育った場所や人種としてのアイデンティティがある土地を離れて生きざるを得ない人がどのような困難を抱えているか、その中でどう喜びを見つけるか、そういうことを知りたいという気持ちがずっとある。

1910年代と1930年代と1980年代、韓国と日本とアメリカ、たくさんの時代と人びとに視点を映す。その物語の中心にはひとりの在日コリアンの女性の一生があって、その壮大さが過剰なものではなくリアリティを持った力強いものとして感じられた。韓国の音楽に興味を持つにつれて韓国と日本のあいだにある歴史に関心を持つようになった2022年の自分にとって、という意味でも大きな作品だった。